2リズム

観光とライブのメモ

観光・インバウンドマーケティング関連のおすすめ本リスト

2015年、訪日外国人旅行者数は1,973万人に達し、政府目標の2,000万人に迫る勢いだ。
また地方創生が叫ばれ、観光による地域の活性化がひとつの課題となっている。

否が応でも観光への関心が高まるなか、観光やインバウンドをテーマにした本の出版も相次いでいる。
今回は最近読んだ観光関連の本の中からおもしろかった本を紹介してみたい。


デービッド・アトキンソン 新・観光立国論

『新・観光立国論』/デービッド・アトキンソン

2030年、年間8,200万人の外国人観光客が訪日する日本への道を提案する。
気配りやマナーは最優先のアピールポイントにはなりえない、断るのではなく追加料金をかけていく、など具体的な改善策にはなるほどと思わせられる。
観光が招く負の側面にも触れ、和らげられるのは経済効果と言い切るところに観光立国を進めたいかどうかの覚悟を問われている気がした。



新・観光立国論 モノづくり国家を超えて

『新・観光立国論 モノづくり国家を超えて』/寺島 実郎

真の統合型リゾート(IR)戦略を模索する。
興味をひいたのは、シンガポールのIR戦略に関する記述。
カジノを認可するにあたり、シンガポール政府は外国資本(マリーナベイ・サンズ)と華人系資本(リゾート・ワールド・セントーサ)の2つのカジノを同時に進めたという。
両者の顔を立てつつ、競争を通して外国資本のノウハウを現地資本に吸収させるという方法は、リスクの管理や独占のコントロールなどの面でおもしろいと感じた。



ハラールマーケット最前線

ハラールマーケット最前線/佐々木 良昭

ハラールの基礎知識と対応の現状レポート。
ハラールとは、主にイスラム法で食べるのを許された物を表す。
事例の中で印象に残ったのが、西日本で初めてイスラム教徒対応をしたホテルグランヴィア京都
礼拝用のカーペット、キブラ(メッカの方角)がわかるもの、聖典コーランの3点セットを各部屋にそろえ、予約なしでハラールの食事を出せるレストランを常設。
安心して滞在してほしいという思いが伝わってくる。
今からイスラム教徒観光客の受け入れを選んで素早く投資しておくかどうかで、数年後の集客に大きな差が生まれそうだと思った。



H.I.S.澤田秀雄の「稼ぐ観光」経営学 (イースト新書)

H.I.S.澤田秀雄の「稼ぐ観光」経営学/澤田 秀雄

ハウステンボスの再建の手法を公開。
新生ハウステンボスの最大の特徴と描かれているのが、テーマパークの3分の1を無料ゾーンにしたこと。
映画館や温浴施設など、パークのコンセプトとは関係ない多様な施設を招き、混沌とした雰囲気を3割くらいもつことが全体の魅力アップにつながるという。
人が集まらなければ何も提供できない、そのことを強く考えさせられた。



訪日外国人観光ビジネス入門講座 沸騰するインバウンド市場攻略ガイド

『訪日外国人観光ビジネス 入門講座』/村山 慶輔

訪日外国人観光客ビジネスの基本知識や実践例を解説。
驚きだったのは、トリップアドバイザーで個人がトップをとった話。
2014年12月の関東1位のアクティビティは、都内在住のMariさんという個人が営む料理教室で、現在ある300件近いクチコミのほとんどは外国人から。
外国人の間で広がる力、知名度のない個人を引っ張り上げる力、日本人にも新たな発見をもたらす力など、クチコミサイトの影響力は観光する側とされる側どちらにとっても無視できない存在だと実感した。



インバウンド戦略 ―人口急減には観光立国で立ち向かえ! ―

インバウンド戦略/中村 好明

ドン・キホーテのインバウンド担当が観光戦略を明かす。
盲点だった記述が、夜のにぎわいについて。
日本では自然や寺社仏閣の観光など昼の流れを重視して、夜の観光をあまり重視してこなかったのではと疑問を呈している。
たしかに世界トップクラスの治安を誇る日本なら、夜市や夜から開く観光施設がもっとあっていいし、夜のほうが開放感もあって落とすお金も多そうだ。
夜の攻略は今後のポイントのひとつになると感じた。



外国人観光客が「笑顔で来店する」しくみ

外国人観光客が「笑顔で来店する」しくみ/新津 研一

外国人観光客の誘致・接客・販売のヒントが満載。
気になったのが、過剰包装の店が多いという訪日外国人の不満。
日本の包装に慣れて意識しづらいものだけに、接客する中でどの程度が好まれるか探ったり、シンプル版と豪華版を提示したり、言語対応のひとつとしてそれぞれが工夫する中で対応方法を見つける必要があると思った。



稼げる観光: 地方が生き残り潤うための知恵 (ポプラ新書)

『稼げる観光 地方が生き残り潤うための知恵』/鈴木 俊博

地方創生の鍵を観光と捉え、稼ぐためのさまざまな知恵を伝授する。
面白かった考え方のひとつが、モノやコトに「学」をつけて考えてみること。
棚田学のように考えることで、棚田が単なる観光地で終わらず、関係者や資料が集まって拠点になり、関心のある人が広範囲から訪れるように…こうした流れが生まれれば、やがてブランド化もの実現も。
どんな資源でも適用できる可能性がある点は地域にとって夢をもてる話だと思った。



観光学事始め―「脱観光的」観光のススメ

『観光学事始め 「脱観光的」観光のススメ』/井口 貢・片山 明久・本康 宏史

旅行者が主導権を持つ創造型観光のあり方に迫る。
興味深かったのは、旅行者が文化の担い手になるという記述。
埼玉県の秩父市では、アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」をきっかけに増えた旅行者が地元の文化(祭り)を支援するようになったという。
外の人間をローカル色の濃い現場で受け入れる寛容さを地域が示し、双方がつながりをもてば、観光は単なる経済活性化に終わらず、地域活性化の大きな切り札になるといえそうだ。



チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1

チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』/東 浩紀・津田 大介・開沼 博

ダークツーリズムスポットといわれるチェルノブイリの取材報告。
ダークツーリズムとは戦争や災害による負の遺産をたどりながら、死や悲しみを共有する観光スタイル。
チェルノブイリ立入禁止区域は2011年から観光地化が本格化し、残された公園や広場、原発の制御室など数多くの写真からは重苦しさやもの悲しさが伝わってくる。
地域のネガティブなイメージを解消するのに大きな役割を果たしてきたとあり、楽しさだけが観光のもつ力ではないと考えさせられた。



まだ読みたい本のストックがいくつかあるので、おもしろければ整理してまた紹介したいと思う。